tonchiroの日記

話題性とは関係なく、自分の興味だけで紹介していきます。本とか映画とか音楽とか。

映画「山女」を見てきました

福永壮志監督の映画「山女」を見てきました。なかなかいい映画でした。

遠野物語を題材にした、18世紀後半の東北地方の農村が舞台です。冷害で村は食糧難に苦しんでいます。生まれてくる子供を育てることができない。ショッキングな場面から映画は始まります。

主人公凛の家は、さらに困難な状況にあります。先祖の犯した罪で村に田んぼを取り上げられ、村の汚れ仕事を引き受けることで何とか食いつなぐしかありません。

凜は、ある事件をきっかけに家を出ます。超えてはいけないと言われている祠を超えて山に入っていきます。そこで山男と出会い、暮らすことになります。凜にとっては、ここで初めて人間らしい生活ができるようになったと感じることになります。

 

凜は、村の人たちからひどい扱いを受けても、心がねじれるわけではなく、健気に生きます。ちょっとできすぎなんじゃないかと思うくらいに。でも、そこは永瀬正敏が演じる父親が受け持ってくれます。父親は十分にひねくれています。少しばかりの米を盗んだ罪を娘に押し付け、田んぼが返ってくるとなれば、今度は娘を犠牲に差し出し、その娘には立派にお役目を果たして来いと言ってしまいます。でも、仕方がないことでしょう。自分のやったわけでもないのに先祖の盗みの罪で田畑は取り上げられ、収入を得る手段もないのに、二人の子供をここまで何とか育ててきた。母親は出てきませんが、おそらく下の息子が生まれてあまり時間がたたないうちに亡くなったのでしょう。つらい人生だったでしょう。さらに、ここから抜け出す手段もなければ、精神を病んで当たり前でしょう。

 

凜が神隠しを装って自ら山に入った時も、父親はそれと知りながら追うこともしません。そして、弟の庄吉が何とか村で生きていけるようにと考えます。18世紀の農村では、息子だけが大事にされるのも当然のことだったと思います。

 

一方の山男は、山の中である意味自由に生きています。ここで一人で生きることになったいきさつは、おそらくつらいことがあったのでしょうが、何とか山犬に食べられることもなく一人で生きていました。

 

東北の山村の映像はきれいです。チェロが深く響く音楽もとてもいい。

ちょっと気になっているのは、弟の庄吉のクレジットはなぜないのでしょう。ポスターや映画情報サイトにも出てきません。重要な役柄だと思うのですが。